さっきからずっと心の汗が出っぱなしなんだぜ

この子を変えられるのは、世界でたったひとりだけだ。
エンディングの向こう側、と言いますか、その後も続く不安定で眩しい日常が、たった17歳の少年が背負うには重すぎて、けど彼自身はそれを分かってそれでも背伸びして精一杯受け止めようとしていて、ホントどうしたら良いのか分からなくなる。夏目が裕一に見せた夫婦の風景や里香の母親が裕一に継げた言葉は、大人が17歳の裕一に与えられる彼らなりの助言なわけですが、それは結局のところ経験してきた彼らだからこそ理解できるわけであって、裕一には想像してみることしか出来ないし、彼自身もそれを分かってるところが何とも痛々しい。けれどそれを飲み込んでそれでも自分の意思で里香と一緒にいることを選ぶ裕一は本当に成長したなぁ、と思った。彼は痛みに弱いけれど、それに耐えられる強い子です。

表紙がパジャマから制服になっただけで泣けてくる……里香良かったなぁ、里香。最近里香が穏やかだったから忘れてたけど、吉崎さんへのやり口であぁ苛烈な子だったなぁ、と思い出した。だからこそ自分の内側にいる裕一へのひたむきな愛情が鮮やかです。
『里香のいない世界を生きる準備をするか、それとも奇跡みたいな可能性に賭けて里香がずっと生きることを信じるか』 夏目の裕一への最後の問いに、裕一がどう答えたかは台詞でもモノローグでも明言されてはいませんが、彼ならば逃げることなく、いずれどちらかを必ず選び取るでしょう。
司とみゆきは素直に応援したくなりますねぇ…つか司が良いヤツ過ぎて微笑ましい。意地っ張りで年相応の幼さ、背伸びのあるみゆきを穏やかに包み込んであげる司、良いカップル過ぎる。
夏目と谷崎の関係は、大人同士のきっちりと弁えてちょうど良い距離を保った感じですね。踏み込む時には踏み込むけど、所詮お互いの立場が違うと分かっている、だからこそ心地良い。ある意味戦友みたいな感じですね。