『烙印の紋章Ⅹ』読了

グールにとってのシモンがオルバさんにとってのシーク過ぎて笑えない…と言うか在りし日のグールがオルバさんに瓜二つでびっくりするわ…シモンも言ってるけど寧ろ本物の息子より息子らしいぞオルバさん。シークを亡くしたオルバと、シモンを亡くしたグール。更にグールはオルバにとってのビリーナに当たる嫁まで亡くしてるわけで、その辺りが対比になるのかな。シモンとグールの最後の直接言葉を介さないやり取りが、袂を分かってどうしても再び交わることができなかった二人が取った最後の会話に思えて切ない。嫁(ビリーナ)と友(シーク)を亡くしたオルバが今のグールなんだと思うと何と言うかこう、上手くできてるなぁと思う。
あと、ビリーナのオルバに対する出しゃばり具合が可愛すぎてですね。勇ましい彼女のやり口を見ていると、ともすれば影を纏いがちなオルバにはこういう眩しい彼女が似合うなぁと思う。っていうかビリーナさんイケメンすぎて…この巻はビリーナ無双だなぁ。ビリーナの行動は「シークが死んでしまって誰も彼を支えられない」って分かってるからなんだろうな、と考えると若干切ないところもあるけど、ビリーナはシークの代わりではなくて、自分としてオルバの為にできることをする辺り(そしてその行動の破天荒さも含めて)流石メインヒロインだと思います。っていうか何なんだこの展開…こんだけビリーナの行動で普段滅多に表にしない子どもっぽい感情に振り回されても、オルバさんはまだ自分の気持ちに気づいてないの? 「あの馬鹿が」とかいかにも自分の中に受け入れた物言いしたり、メダルについた血がビリーナのだと勘違いして動揺したり、絶対無くしたくない最後の温もりだとすら思ってたりするのに…お前、それは恋だってばよ! 気づけよ! しかし気づいたら最後きっと隣の国まで花嫁浚いに行っちゃう系な気もするわけで、オルバさんとビリーナの恋愛模様のあまりのドラマチックさに俺はもうにやにやせざるを得ない。オルバさんが自分の気持ちに気づく時、絶対青天の霹靂状態だと思うよ!
話としては、最初はまたもや前哨戦。グールもオルバも大きな動きはせず小競り合いを続けている…まぁ色んな人に正体がバレたり色々しつつはあるんだけど、今回はお互いの手の読み合いであったり政治的な駆け引きが主で血肉沸き踊る大きな戦争はない…ないんだが、これがどうして面白い。後から大きなうねりに繋がっていくのも去ることながら、多分歴史物だと一気に省略されたり特徴的なエピソードだけ取り上げて端折られてしまう『対局に面した時の人々の感情の動き』を上手く生き生きと書けているからだろうな、と思う。ただその分アレだ、出てくる登場人物が多いので「あれ? この人誰だっけ?」って苦労することになる…メフィウスに触発されて他国の動きも出てきたからだろうけど…そろそろ人物表つけてくださいよ電撃さん(白目
あと、前の巻でシークが死んでしまったからか、話が大きくなってきたからか、色々人死にが多発してますね。あ、あと描写はないですが容赦無くレイプも突っ込んできましたね、杉原てんて…(;´Д`)、、、
これからクライマックスということで終わりに近づいてるんだと思いますが、終了後にぜひとも杉原先生のインタビュー記事とかやってほしいなぁ…電撃でこんな硬派な戦記物やるって結構色々紆余曲折とか壁とかきっとあったと思うんだ。まぁ、とまれ、最後まで楽しませていただきたく、続きを所望する次第であります。