『コミュ-黒い竜と優しい王国-』(暁WORKS)

元々はバラバラだった人が繋がって、小さなやり取りや共に行動したことが柵や弱点になり、けれどそれは何ものにも代えがたくなっていく。けれど、それは亡くす予兆でもあり、人を臆病にさせるものでもあり、人を復讐へ駆り立てるものでもあり。
ここは優しい王国だから、誰のことも差別しない。平等に、無意味に、無慈悲に、幸運も不運も与える。しかしそれを受け入れられないのならば、そこに理由が欲しいのならば、あるいは否定したいのならば――意思と力を使うしかない。そう、己の意思を。「それでも、」とつまらない意地を張って。

面白かったです。最初の印象は「月姫?」って感じでしたけど、どっちかって言うと毒のあるFateって言う方がしっくりくるかな(んでラストはCARNIVAL)。利害の一致で結びつき、お互いを信用していないのに生き死にを共にしなくてはならない運命共同体。崇高な理想もなく、ただあるがままの感情で動く。故にそれは『正しくも』『間違っても』いない。
何と言うか、白黒が曖昧なんですよね……全員が色の濃さの違いはあるとは言え、灰色。絶対の正しさも、絶対の潔白さもない。信念よりも怨恨とかそういうので動いてる分、変に皆折り合いがつかなくて不協和音がすごいすごい。でも返ってそういうところが清清しいというか何と言うかね? 命の重みも割と平等。悪いやつだろうがイイヤツだろうが大物だろうが小者だろうが、等しくその人の運と能力に左右されて生きて死ぬ。まぁただ巷で言われているように、俺たちの戦いはこれからだエンド、と言われても仕方ないかもしれないです。個人的には生き残った八人が仲良くやって行ってるのはすごく嬉しかったですけどね。
何気に演出とか音楽が良かったのも収穫です。共通ルートのラストに流れた挿入歌や、切ないシーンで流れる主題歌のピアノバージョンがこれでもかと言うぐらいに胸にぎゅんぎゅん来ました。
暁WORKSのるい智のラインはこれからも個人的に要注目です。

ということでこれまでの感想も合わせて↓

*紅緒ルート★★★★☆(紅緒:★★★☆☆)
ルートの点数は「紅緒でこれならカゴメはきっと末恐ろしいことになるんだろう」という意味で4点。通常のシナリオなら5点出してあげても良いかも。まず赤がフェイクだったのにはびっくりした。主人公の母が死んだ事件のフラッシュバックなのかと思いきや(実際そうだったところもありますが)、主人公が母を殺した犯人を殺した時のフラッシュバックだったんですな。人殺し属性主人公ktkr。
ストーリーと言うか、主人公の心情の変化は丁寧に書いていたと思います。心の底にどろどろした復讐心とか怒りとかを持ち合わせながらも、同時に臆病である主人公を、ただ真っ直ぐな紅緒と対比させる、という意味で最初の攻略対象として良い設定かと。我が道を行く覇王・我斎との対比も面白かった。人はルールがなければ生きられない、人の行動を抑制するのはルール、ただそれだけ。だけれどもそれはあまりに脆い。日常世界と隣り合わせの裏にある、明確なルールのない世界・コミュ。その中でどう行動を抑制し、また折り合いをつけていくのかというのは難しい問題ですね。『優しい王国』ってサブタイトルがここまで無情に使われてる内容も珍しい気がする……ストーリー自体は好き嫌い分かれると見た。私は大好きですが。
紅緒自身は熱血正義バカなので、可愛くもあり鬱陶しい時は鬱陶しくもあり。ラストの辺りは一本気通ってて普通に良かったですけどね。

紅緒ルートの伊沢:やっぱりイチイチ可愛すぎて困る。貴重な照れ立ち絵を是非ともイベントCGに登録してくれ! 出番少ないから心待ちにしている私がいる……伊沢可愛いよ伊沢。

*密ルート★★★★☆(密:★★★★☆)
うへぁ……これはまた堪えるルートだなぁオイ……ラストには5人中3人が脱落で(一人も死んでないのは主人公補正と言えますが)、ヒロイン・密も満身創痍過ぎる。何がアレって、バビロンが地味に観客踏んで死なせちゃったりしてるとこかな。あ、容赦ねぇな、と。密も主人公も優しくて平等でだからこそ理不尽な世界に対して爪を立てたもの同士、傷を舐め合ってお互いを分かりすぎてるからジリ貧になって。結局『それでも』の呪文を持って世界に立ち向かうけれど、世界は相変わらず優しいだけでした、と。お伽もクソもないスプーン一匙の幸せしかないエンディングだったでござる。
ちなみにエンディングのもう一つは、自らの手を汚す、という犠牲の上に平和な日常を取り戻すと言う、らしいエンディングでした。こっちは一匙の不幸が混じったハッピーエンド。でもおそらく最初のエンディングの方が正規エンディングなんだろうな。
淡白な密が実は嫉妬キャラと言うのは王道で良い感じでした。ただ青山ゆかり声がどうも……最近得意じゃないんです、サーセン。不健康そうな薄胸というビジュアルは大変美味しゅうございました。

密ルートの伊沢:し、死んだかと思ったよ……!! 追われてる時に結局仲間を頼らなかったのが、伊沢なりの優しさで胸キュンしすぎた! 何この子、スレてる癖に良い子過ぎ! 伊沢かーいいよ伊沢。

*アヤヤルート★★☆☆☆(アヤヤ:★★☆☆☆)
出た、暗いメインストーリーのサイド的な何ちゃってストーリー。正直良いタイミングです。コミュの5人が楽しく日常やってるのをちょっと見てみたかったので。
しかし主人公がアヤヤに付き合ってって言われてソッコーでOK出すのが違和感と言うか、え、それで良いの?みたいな。まぁアレですね、オマケルートって言うかいっそパラレルと考えてしまえば良いのか。このルートだけごく普通の萌えゲーみたいでしたよ……?
あ、あと四天王は地味に面白かったです。松竹梅特上ワロタw

アヤヤルートの伊沢:女の子と間違えられてナンパされる伊沢可愛い……目つき悪い美少女ktkr! メールでバラされるのと言い、付け入る隙のある伊沢が可愛すぎる……

*真雪ルート★★☆☆☆(真雪★★★★★)
まゆまゆ可愛すぎだろ……シナリオ展開が緩くてもまゆまゆの可愛さだけで余裕です。ロリ万歳。どのCGのまゆまゆも可愛すぎ噴いたw アヤヤルートが派生なだけあって、色々平穏です。内容としては、多分凪の時間、かな。退屈で平穏な日々の大切さみたいな? 取り合えず主人公の頭は良い具合に緩くなっている(主にロリコン的な意味で)。ストーリーは気にするな、まゆまゆの可愛さをドントシンクフィールだ、って感じです。シビアさが欠けているのでぶっちゃけ他のルートとは全然毛並みが違います。覇王もラウンドも出てきません……政治とかしがらみとかそういうのはあんまり出てないかな。深く悩んだりはせず、日常を楽しむルートと言っても良いでしょう。まぁまゆまゆが可愛いからそれで良いや。カゴメルートとの落差がすごそうで今から心配w
あとバルバロイワロタw いるいるw

まゆまゆルートの伊沢:アイドルのCD持ってる伊沢なんて……可愛いわ、ドチクショウ。シスコンの伊沢可愛いなぁ。丸くなった伊沢も可愛いなぁ(←もはや伊沢なら何でも良い)

カゴメルート★★★★★(カゴメ:★★★★★)
しかしカゴメがスティングの接続者とかダイエットサプリとかオーナーの正体とか色々伏線に気づかんかった……途中まで正直暁人のやり方とか考え方はどうかと思ってたんだけど(奈々世さんとあんまり変わらんよね……目に映る全てを掬おうとしてどっちつかずの八方美人になってダメになっていくとことか)、コミュの残りの4人から手を切られても、王様と袂を分かっても、死神に脅されても、屈さずにただ魔女を信じた暁人は本当に「馬鹿な道化」で好感を持てた。幼馴染万歳。押し倒しちゅ―万歳。ラストバトルでヒロインにガンガン頭突きかます主人公……w フェミニストが聞いて呆れます(褒め言葉)。
再度コミュメンバーが集まって仲間、になった辺りも良かったなぁ……特にまゆまゆの「困るって言え!」は名言。あくまで貸し借りでやり取りする伊沢も、正義のためと言う紅緒も、意見のないお春さんも、全員誰一人偽ることなく利害と……そしてほんの少しだけお互いの為に、手を取って。まぁ出陣したのは伊沢と暁人だけでしたけどね!
んでもって、戦争の後のいざこざで我斎が死んだのがショックすぎた……自分が死ぬと分かってて夜子を逃がした、揺らがない決意と別れ、そして我斎の死体を目にした時の夜子の叫び声……ヤバかった。無情すぎるだろ……女しか助かってないの酷い逆差別です>< しばらく呆然としちゃったよ。
あと、ラストバトルの密泣けました……ごめん、青山ゆかり声苦手とか言ってごめん、見直した。
カゴメさんも無敵ヒロイン過ぎてすごいわ……イイ女だ。最初は暁人にはもったいないとか思ったけど、カゴメルートやると、暁人しかいないね、とか思った。本当にどこまでも馬鹿な道化だからこそ、魔女は己の全てを懸けて守る。優しい王国に御伽噺はなくとも、魔女と道化は、幸せに暮らしましたとさ。

カゴメルートの伊沢:まさかのメイド服CG……! スタッフ良く分かっている……!! やっぱり美少女顔少年には女装CGの一つや二つお約束だよねー……何という俺得! そしてカラオケの上手い伊沢……身内には甘い伊沢……チビキャラになっても可愛い伊沢……シスコン可愛いよ伊沢……伊沢可愛いよ伊沢。スタッフはさっさと伊沢ルートを作る作業に戻ってください! 伊沢は俺の嫁!! お春さんにちゅーされても伊沢は俺の嫁……(泣