『装甲悪鬼村正』(Nitro+)

あ、ホント…もうこんな時間か…畜生面白すぎた。積んでた俺はバカ、バカバカバカ。あぁ、ホントこれだけの圧倒的な力で駆け抜けてくれれば、もうそれだけで良い。それだけで点数をつけるのがおこがましい。ここまで突き詰めてくれれば、もう何も要らない……ということで★表記ありません。
然り、これぞ妥協せず足掻きもがき苦しみ殺し殺し尽くし。どこまでもストイックに、しかしどこまでも人間として駆け抜ける、壮絶な悪鬼の物語である。

*一条ルート
歪みなく真っ直ぐに求めるが故に歪んでしまったヒロイン・一条さんとの終わり方はあぁしかなかったと思う。潔白に一部の隙もなく正義を求め、その執行のための殺人を(消極的ながらも)肯定する一条さんと、殺人は殺人、そこに正義はないと否定する湊斗さん。この二人が交わりあえるわけがなかった。エピローグ、残ってしまった一人と一振りがギリギリで生きていること事態が、この二つの考え方にはどちらに軍配があがるわけでもなく、終わりのない争いが続くのを暗示しているのだと思います。
善悪相殺の意味は成る程な、と納得。それ故に光の一時期の湊斗さんに対する失望も、納得。つまりは嫌がっている限りは湊斗さんには覚悟が足りなかったと言うことなのですね。常に後悔・自問するだけでは足りない、その先を行く覚悟。最期には納得の行くあり方でいてくれたと思います。
…一条さんには正直そんな思い入れがないんで感想が短く…すいませ(ry

*香奈枝ルート
香奈枝様マジ半端ねぇっす! ヒロインで高貴な身分な癖に殺人狂とか高笑い具合の邪悪さとかホントスゲェ…こんなヒロイン酷すぎるお(褒め言葉)。「何かを傷つけ害しぶち壊す以外のことに何の才腕もない方」ってすごい言われようだな…事実だが。けれどそれでいて、情の深さも隠し持っているところが好きでたまらない。自分の性根が腐りきってるところを理解しつくしているのもホント堪らない。正直に言う…幸せになる姿が全く想像できないが、湊斗さんと二人で生きて不幸になってほしかった。。。
しかし湊斗さんも香奈枝さんも、二人ともある一面ではものすごいストイックなのですね。香奈枝さんは確かに趣味嗜好である殺人で快楽を感じてはいるけれども、自分自身の個の価値には呆れるほど淡白で、"復讐者"としての自分を常に意識する高貴なる血(ノーブレス・オブリージュ)。それは湊斗さんもそうで、彼はこれまでの過去を積み上げた自分自身に対して呆れるほどに嫌悪している。その二人がお互いがお互いの大切なものを奪った関係であり、一方は一方を殺したいと願い、一方は一方に裁かれたいと願っている――何かもうこの構図だけでホント泥沼すぎて…正直ものすごい好みだったのです。
が、ラストに正体を明かさずに湊斗さんと香奈枝さんが戦闘になった辺りで決定的に覆されたというか、もうダメだったというか。香奈枝だけが唯一、湊斗景明に復讐されることが出来る立場に居る。彼女だけが唯一対等に裁き合える。この構図が本当に切な過ぎて。己の醜悪な嗜好をただの嗜好と認め、大義名分であった復讐を投げ捨ててすら、湊斗さんの弁明を肩代わりして生かそうとした香奈枝様の情の深さと言ったら…。
けどそれで終わらないのが村正ですね。過去も情も何もかも捨て去って残るのは殺し合いと復讐しかない。酷くロマンチックで、酷く救いがなく、血に溢れて無残な、悪の性根に相応しい、最期。けれど、どちらかが取り残されなくて本当に良かったと思います。


茶々丸ルート
茶々丸様が意外に尽くしんぼだったところには素直に好感度が上がったのですが、どちらかというと茶々丸ルートじゃないその後の愛憎入り交じったけど最期にほんのちょっと愛に負けちゃう茶々丸様の"人間らしさ"にほろっと来てしまうわけで。しかしルートぶっちゃけ要らなかっ(ry

*トゥルールート
まず神が出てきた辺りの第一次エンディング、何この壮絶な終わり…って言うかアレだよ、全然気づかなかったよ…父親かよ…orz ホントヤバイ何この圧倒的な壮絶さは。突き詰めればこれ家族愛の話なんだよな? 壮絶な家族愛をまざまざと魅せつけられて本当に…どうしようもありません。最期の湊斗さんのあまりの華々しい散りっぷりにお姉さんびっくりしたよ。でもそうだよね、善悪相殺ってなるとそうするしかないよね。しかし湊斗さんホント「ヒカルゥー!」言い過ぎだろ…どう考えてもこの時点では光が一番です、他のヒロインお疲れさまでした。あ、あと長坂右京出てきたのワロタwww そういやいたよな、そんなんいたよなw まぁすぐに退場したけどw
しかし、戦い終わったその後が出てきてからが本領発揮でした…いや、確かにここまで書かないと"湊斗景明"の物語ではないのよね。酒かっくらって絶望してる湊斗さんのお姿を見るのもアレでしたが、村正たんとの初夜シーンの後の幸せキャッキャウフフがね…もういつ壊れるかってね、ホントいつ凄惨でアレでコレな装甲悪鬼村正本来の物語に戻るかってね、ハハッ。いやもうファンディスクでやっても良いくらいの幸せっぷりだったと思うの! 俺もそんなキャッキャウフフが見れて嬉しいの! だけど、装甲悪鬼村正じゃないじゃん…そう思って構えてたらアレだよ! 雪車町とかすっかり忘れてたわ! …いやホントどこまでも装甲悪鬼村正でした。
でもね、最後の最後に家族愛じゃなくて恋慕の愛を持ってきたのが見事だと思うの…結局さ、このダメな人を救えるのは、同じだけ汚れて同じだけ罪を背負って同じだけ重い使命を帯びて、それでもその全てを曲げてでも最後にこの人への愛を取って、けれど最後の最後にこの人をあるがままにさせてあげられる娘だけなんだよね。最萌えヒロインが無機物だってのがスゲェけどな。あ、でもどちらかって言うと雪車町をムッ殺しちゃうエンドの方が好きかもしれません…色々と絶望的で。
兎にも角にも。久々にスタッフの全力を魅せてもらった作品だった。ありがとう、奈良原てんてー。ありがとう、ニトロ! 俺一生ついていくよ!