『幻想のアヴァタール』(べにたぬき)

同人だと言うことを考慮すれば、最高峰のクオリティと言って良いでしょう。『月姫』(TYPE MOON)のような傑作には届かなくても、確実に良作以上は行くレベル。まぁ客観的に見て粗はあると思いますが、個人的な好き嫌いでいうとかなり好きな部類のゲームだったので大満足でございます。
"現代"和風伝奇ファンタジーと銘打っている通り、題材は日本の民話とか歴史とかそういったものですね。謎解きとバトルと頭脳戦と恋愛とが主な内容かなぁ。
謎解きに関しては、『誰が(何が)敵なのか?』っていうミステリ的な要素から、『呪いの起源はどこか?』っていう民話を解き明かすような要素までかなり大量に出てくるので、ちゃんと読まないと「???」ってなります。って言うかなった。正直もう一周した方が良さそう。
バトルに関しては非常に良かったです。バトル描写が長くなると大技→驚愕の繰り返しになってしまいがちでどうも締まらないのですが、ちょうど良い具合の長さだったと思います。画面効果の使い方が非常に上手く、またCGも使い回しがあった割には飽きが来なかった。まぁこれは私がバトルで活躍してた狸娘たちが大好きだからってのもあるかも。ギンさんもアカもミドリも俺の嫁になると良いんや…! あぁ、でもあんなにおもわせぶりにくろかしたのにほとんどやくにたたなかったとおやさんはざんねんでしたよ…!
頭脳戦、正直自分内で一番盛り上がりました。マヨ姉と十哉のやり取りとか、マヨ姉と十哉のやり取りとか!(大事なことなので2回言いました)。頭脳としては茂久>>マヨ姉>>十哉、って感じなんでしょうけど。マヨ姉がかなり用意周到だっただけに、最後にエイダを用意していた茂久にはマジ脱帽です…親父格好良い…!
恋愛に関しては最後を除いて良かったと思います。十哉と楠姫が徐々に距離を詰めていく辺りは叩きまくった床が心配になるほどでした。ラストはあぁいう形になってしまうのは仕方ないと思うのですが、もうちょっとキパッとしてほしかったというか、よりを戻したり別れたりは一回で良いだろ…俺の好きなくすきんなら分かってくれるはずだ。

全体的に大ボリュームを非常に丁寧に上手いことまとめてらっしゃるなぁと思いました。楽しかったし、どんでん返しも要所要所できっちり組まれていて、「うがぉぉぉ」とか思わされたこと多かったですし(特にマヨ姉関連は色々と…流石マヨ姉魔性の女やで)。ここまで一気にプレイするの久しぶりでした。あー、面白かった。

ただちょっと気になった点もありまして。
最終決戦で、マヨ姉が『不幸な人間の我侭を貫き通した』のに対して、楠姫がそれを『善悪の正論で説き伏せた』のは個人的に非常に納得がいきません。マヨ姉は自分が間違ってることなんて最初から分かっていて、それを認めリスクを負いつつ自分の我侭を通した。もちろん、他人を巻き込んで良いかって言ったらダメですが、他人から敵意を向けられたり非難されたり否定されたりすることを正面から受け入れて、他人を巻き込んだマヨ姉はある意味とても誠実だったと思うのですね。楠姫はそれに対して、『他人を巻き込んではいけない』『負の連鎖は終わらせないといけない』と言った正論で向かっているわけですが、その裏にある楠姫自身の気持ちを全く楯として使わなかったのが不公平だったかな、と。それって結局楠姫が幸せな人間だから、失うものがある人間だから言えることだよなぁ、と。あの展開は……正直マヨ姉に同情票が集まっても仕方がないと思うんだぜ。マヨ姉は自分が今後背負っていくものとかそういったものを全て見据えてあの選択をしたのだと思うのですが、エイダという傍に寄り添う存在を創っておいてくれた親父さん、ホント予見能力パネェッス。
あー、でもアレですね、結局楠姫とお母さんの間に絆がなかったのは正直良くやったと思いました。血も繋がっておらず、お父さんを通してしか楠姫を見てなかったお母さんは最後まで弱いままで、何も解決できなかった辺りは非常に良かったと思います。白黒の解決ではなくて、折り合いをつけてがむしゃらに前に進むって言うのが楠姫には似合っていると思う。

好きなキャラはマヨ姉と言うか、エピローグで出てきたマヨ姉&建部&エイダの組み合わせが好きすぎて困る。建部女難杉wwww マヨ姉みたいな自分で自分のことすら場合によっては誤魔化せそうなくらいの寂しい女には、馬鹿なまでに愚直な建部がお似合いだと思うんだよ! 我良いじゃないか、刹那的で快楽主義で奔放で残忍でほんの少しだけ寂しがりなマヨ姉と、他にもっと大事な存在がいるけどだからこそ素でマヨ姉をハッとさせるようなことを言えちゃったりする建部。この組み合わせに擬似娘エイダ(マヨ姉大好き、建部はおバカさん扱い)とかホント熱い。あー畜生ホントFDって言うか、この3人で後日談頼みます、べにたぬきさん!